高等職業訓練専門学校(TAFE)は、オーストラリアの公立の専門学校。“Technical and Further Education”の略で、オーストラリアでは大学と並ぶ高等教育機関だ。狭き門というイメージが強いオーストラリアの大学に比べ、TAFEは即戦力となるような知識・技術が学べる地元オーストラリア人にも人気の学校。ここでは、TAFEが開講する多彩なプログラム・取得可能な資格について解説する。

Photo: Tourism Queensland
■TAFEで取得できる資格のレベルは?
TAFEのコースは、数カ月で修了するものから、2〜3年かかるものまでさまざま。サーティフィケート1(4〜6カ月)から始まり、サーティフィケート2(6〜8カ月)、サーティフィケート3(6カ月以上)、サーティフィケート4(12〜18カ月)、ディプロマ(18〜24カ月)と続き、最高レベルが上級ディプロマ(24〜36カ月)となる。サーティフィケートは、一般に言えば「証明」であり、資格としての認知度は比較的低い。履歴書に高等教育として記入できる資格を目指す人は、「資格」として認められているディプロマ・レベルのコースを選ぶ必要がある。
しかし、単なる「証明」と言えど、サーティフィケート・プログラムで学ぶ利点も数々存在する。例えば、人気の高い美容分野のディプロマ・コースでは、生理学から栄養学、脱毛やマニキュア・ペディキュア、メイクからマッサージ、さらには経営や安全管理など包括的に学ぶ。その一方で、論理や経営よりも実践だけに特化して勉強したいという人のために、ネイルやメイクなど特定の技術が6カ月程度で学べるサーティフィケート・コースが設けられているなど、短期間で特定のスキルを身に着けたいという人にはお薦めだ。つまり、TAFEとは必ずしも「資格」を取得する場ではなく、自分に今欠けている技術を学ぶ、プラスアルファの技術を身に着ける機関と考えればいいだろう。
■TAFEで取れる資格・技術を教えて!
| ・ビジネス |
・レジャー |
| ・自動車 |
・農業 |
| ・園芸 |
・美容 |
| ・ホスピタリティー |
・福祉 |
| ・看護 |
・動物 |
| ・建築 |
・環境 |
| ・ツーリズム |
・航空 |
| ・海洋 |
・工学 |
| ・保険・医療 |
・法律 |
| ・デザイン |
・情報技術 |
| ・通訳・翻訳 |
・映像 |
| ・教育 |
・馬産業 |
NSW州だけを見ても、州内に「インスティテュート」と呼ばれる10の独立校、合計130校の分校があり、開講されているプログラムもIT、ビジネス、ホスピタリティー、調理、さらには航空や馬産業など、とにかく「TAFEで学べないことなどない!」と言ってもよいほど幅広いコースが提供されている。以下に、TAFEで学べる分野の代表例を挙げてみた。
一般に、ホスピタリティーやビジネス、ITといった人気分野は各州のTAFEでプログラムが開講されているが、海洋産業が発達しているQLD州沿岸では海洋、ワイナリーが数多く存在するSA州ではワインのコースが充実しているなど、地域色も生かされている。まず自分が何を勉強したいのかを考え、それを学ぶにはどのTAFEが最適なのか、じっくり調べてみよう。
■人気のTAFEコース
◎ビジネス
Photo: Tourism Queensland
ビジネス関連は、これから日本に帰って再就職を考えている人にお薦め。ひと言にビジネスと言っても、会計から経営、秘書、セールス&マーケティングまで、多彩なコースがそろっている。その一方で、経営やマーケティング、会計などビジネス関連の知識・技術が包括的に学べるコースもある。自分に不足している分野に特化して学ぶもよし、ビジネスを全般的に学ぶもよし。自分のニーズに合わせてコース選びを。
◎ツーリズム&ホスピタリティ
Photo: Tourism Queensland
観光業が主要産業のオーストラリアでは、もちろんツーリズム&ホスピタリティーの学習がとても盛ん。ひと言にホスピタリティーと言っても、調理師やパティシエ、バーテンダー、ホテルスタッフなどの実務から、ホテルやレストラン経営などの管理職レベルまで、その種類もさまざま。オーストラリア人にも人気で、充実したコースが整っている。
◎美容
Photo: Tourism Victoria
美容ブームの昨今。ヘアドレッシングからメイクアップ、ネイルからアロマセラピーまで、多数のTAFEが幅広いコースを開講している。ホスピタリティー同様、実務的な技術が学べる一方で、マーケティングや雇用など、店の経営に関するビジネス面の学習も可能だ。

Photo: Tourism Queensland
◎TESOL
Photo: Tourism Queensland
近年人気なのがTESOL。「Teaching English to Speakers of Other Languages」の略で、英語を母国語としない人への英語教授法だ。まだ限られたTAFEでしか開講されておらず、取得できる資格もたいていがサーティフィケート・レベル。なかには学部、大学院レベルでのプログラムを設けている大学もある。そのほか、私立の学校でも勉強することができる。
■TAFEから大学編入の道
TAFEで勉強したけれど、さらに専門性を高めたい。希望の職に着くには、どうしても学位が必要。または、英語力や学歴が足りなかったという理由から、大学進学を諦めTAFEに進学した…というアナタ。大学進学を諦めるのはまだ早い。TAFEの資格の多くは大学で認められており、TAFEでディプロマや上級ディプロマを修了後、大学の関連学部に編入が可能なのだ。
例えばNSW州だけを取って見ても、100以上のTAFEコースが約700の大学プログラムで認められているほか、TAFEから単位移行も可能だ。一般に、ディプロマもしくは上級ディプロマは、大学の1〜1.5年分の単位として認められるため、大学の2年次以降に編入することができる。このように、現時点では英語力や学歴不足で大学進学が難しい人も、TAFEに通うことで大学進学を目指すことができる。
●ダイレクト・エントリーって何?
ダイレクト・エントリーとは、大学やTAFEへ直接入学するための英語プログラムのこと。一般に、大学はIELTS(アカデミック)で6.5ポイント、もしくはTOEFL570点、TAFEはIELTS5.5ポイント、TOEFL530点の英語力を入学基準としているが、大学やTAFE付属の語学学校でダイレクト・エントリー・プログラムを修了することにより、これらの英語テストを受けることなく大学やTAFE入学が可能になる。
プログラムの期間は平均10週間程度。しかし、同プログラムを通じて進学することの利点は、IELTSやTOEICを受けずにすむからというよりも、むしろ大学やTAFEの授業で必要とされるスキルを得ることができる点にある。大学の授業についていくために必要なレポートや論文の書き方、英語の文法、ノートの取り方、プレゼンテーションやディスカッションの仕方など、進学英語を総合的に学ぶことができるのだ。
大学やTAFE進学を希望する人は、まず自分が希望する大学・TAFE付属の語学学校があるか、また、大学・TAFE付属の語学学校がエントリー・プログラムを設けているかどうかを確認することが学校選びの第一歩となる。また最近では、大学付属でなくとも大学やTAFE、カレッジと提携し、ダイレクト・エントリー・プログラムを提供している語学学校も増えてきているので、気になる語学学校に問い合わせてみるのもよいだろう。
(*ダイレクト・エントリー・プログラムに入学する際には、大学進学希望者で平均IELTS6.0、TOEFL550、TAFE進学希望者で平均IELTS5.5、TOEFL500など、高い英語能力を必要とする。また、希望大学・TAFEに入学するには、英語力以外の基準も満たしていなければならない)
オーストラリアTAFE/大学進学の道

※IELTSはアカデミック・モジュール。数値はあくまでも目安。
※上記の英語力以外に、学歴などの入学条件を満たしている必要がある。