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【コラム】ザ・ブロックを訪れて - 2006年12月12日 |
取材・文・写真=香取夏野


シドニーに長く住んでいる人でも、レッドファーンの“ザ・ブロック”と呼ばれるアボリジニ・コミュニティーに足を踏み入れたことのある人はほとんどいないのではないだろうか。ここでアート・イベントがあると聞き、11月18日の最終夜に出掛けてみた。
夜8時、レッドファーン駅近くの薄暗い線路脇の一角に大勢の人が集まっていた。この『ギャザリング・グランド−ヒストリー・セレモニー・プロテスト』イベントは、コミュニティーが、シドニーの人々にザ・ブロックに来て、アボリジニの子供たちや若者とプロのアーティストらの共同作業によるパフォーマンスを楽しんでもらいながら、自分の目でザ・ブロックへの理解を深めてほしいと企画。“I love the Block”を合言葉に、「来て、見て、一緒に楽しんで ! 」という3夜のイベントとして実施された。
私たち参加者は、土地に外部の人を受け入れる際に行われるアボリジニ伝統の“煙りの儀式”で歓迎される。それから案内人について街を回り、街角で繰り広げられるパフォーマンスを見る仕掛けだ。最初のアートは、ザ・ブロックの昔の姿が古い建物の外壁に映し出されるスライド・ショー。日本人写真家・金森マユ氏が10年前にこのエリアの人々を撮影した作品が外壁を飾った。
アボリジニ出身の世界チャンピオン、アンソニー・ムンディンを生んだボクシング・ジムの前ではアクロバットとボクシング・ショーが、また、バスケット・コートでは地元の子供たちが、ヒップホップ・ミュージシャンのワイヤーMCやフレーズと一緒に軽快なリズムに乗せて歌やストリート・ダンスを披露した。
広場では4歳〜10代の少女たちが自作のファッション・ショーで見事なキャット・ウォークを見せ、観客を沸かせた。参加した40人以上の子供たちが自らパフォーマンスのアイデアを練り、1カ月にわたるプロのレッスンを受けて作り上げたそうだ。上手な子ばかりではないが一生懸命でキュートな姿に多くの拍手が集まっていた。
実は今、サマンサ・ハリス(16)という若いモデルがファッション界で注目されている。アボリジニ出身でオーストラリア初の“スーパー・モデル”になるのではと期待されているのだ。今夜出会ったザ・ブロックの子供たちの中からも彼女のような次世代スーパー・モデルやダンサー、アーティストが出てくるのかもしれない。
イベントの広報担当クリス・マーフィー(PACTユース・シアター)に話を聞いたところ、「ザ・ブロック(やアボリジニ・コミュニティー)は、貧困やアルコール、ドラッグの問題、危ない所、といったネガティブなイメージで語られることが多いが、もっとポジティブな面も知ってほしい。実際に来て、自分の目で見て、皆に会って、そしてパフォーマンスを一緒に楽しんでくれれば」とのこと。
11月16〜18日の3日間に、ザ・ブロックの外からこのイベントを見に来た参加者は約700〜800人。口コミやEメールで広がり、日を追うごとに参加者が増えて賑やかな最終夜となった。
なお、今回のイベントが好評を博したことから、第2回目のイベントが2007年の同時期に開催されることが決定した。詳細は決まり次第、以下のホームページで紹介される。
PACTユース・シアター
Web: www.pact.net.au
または、シドニーのイベント情報
Web: www.whatsonsydney.com.au

▲ファンション・ショーの様子
■ザ・ブロック
レッドファーン駅そばにあるアボリジニ地区。70年代初めに各地でアボリジニによる土地所有権運動が起こった際にいち早く所有権回復に成功した(1972年)。アボリジニにとって歴史的・文化的に重要なエリア。現在もアボリジニにより自主運営されるハウジング・コーポレーション(AHC)によって管理されている。シドニー中心部に近く、何度も再開発の波に飲まれそうになってきたが、現在も多くのNSW州のアボリジニにとって「スピリチュアルなホームランド」になっている。2004年2月、警察に追われて死亡した少年の事件をきっかけに暴動が起きたことも記憶に新しい。
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