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ローカルニュース&イベント情報
ローカルニュース&イベント情報 - 2006年11月09日
【インタビュー】手塚治虫展キュレーターに聞く - 2006年11月09日

「かわいいのにシリアス、それが手塚の魅力」
マーベル・オブ・マンガ:手塚治虫展キュレーター
フィリップ・ブロフィ氏

http://www.25today.com/column/upload/2006/11/philip25today-thumb.JPG
 戦後間もない1946年から膨大な数のマンガ作品を発表、死後もなお国民に広く愛され続ける「マンガの神様」手塚治虫。オーストラリアを含む海外各国でもアニメ版「鉄腕アトム」がテレビ放映され、「アストロ・ボーイ」の名で人気を呼んだ。その手塚治虫の作品を大々的に回顧する展覧会が11月3日から、ビクトリア国立ギャラリー(NGV)で開催される。同展を企画したキュレーター(学芸員)で、映画監督、アーティスト、ミュージシャンとしても幅広く活躍する日本のマンガの権威、フィリップ・ブロフィ氏に話を聞いた。

http://www.25today.com/column/upload/2006/11/tezuka25today-thumb.jpg
TEZUKA Osamu, Japanese 1928-89, Slip-case design for Metropolis (Metoroporisu) 1949
watercolour, 65.0 x 58.0 cm, (c) Tezuka Productions

ー始めに展覧会の構成について教えてください。
 その前に西洋での「マンガ」の位置付けについて話しておきたいと思います。意外なことに、西洋人はマンガについてほんの少ししか知らないんです。「日本のマンガ」と言えば、クレージーでオタクで、サラリーマンが電車の中で読んでいてという偏ったイメージしか持っていません。あの『アストロ・ボーイ』の原作が『鉄腕アトム』というマンガだということすら知っている人は本当に少ないんです。でも僕は戦後日本の社会と文化を理解する上でマンガは重要な意味を持っていると思います。だからこの展覧会は手塚治虫という代表的な作家に注目することによって、これまで偏った形でしか認識されてこなかった「日本のマンガ」を、きちんとした方法で西洋に紹介するという意図があるのです。
 今回の展示はこの方針に基づいて構成しました。計200点以上の原画を「マンガ」と「劇画」の2つに分けて展示します。「マンガ」部門では主に『鉄腕アトム』『メトロポリス』など初期の代表作品でアニメ化されたものの紹介、そしてもう1つの部門では、西洋人にとって特に未知の世界である「劇画」−60年代の後半から大きく発展した、シリアスな政治・社会的テーマを扱った『ブッダ』や『火の鳥』『人間昆虫記』などの作品を展示します。
 現地オーストラリアの人々はこの手塚展を見て、きっとすごく驚くと思います。まず『アストロ・ボーイ』がもともとマンガだったと知って驚き、そして「劇画」というメッセージ性の高い芸術作品の存在を知ってまた驚く。西洋人にとっての「マンガ事始」とでも言うべき展覧会になるはずです。

−今まで日本以外の国で手塚展が行われたことはなかったのですか?
 ごく小規模のものはありましたが、こんな大きな美術館やギャラリーで大々的にやるのは初めてです。実際、今回NGVでの開催にこぎつけるまでずいぶん苦労しました。普段印象派とかピカソ展をやっているNGVではテヅカオサムなんて誰も聞いたこともないのですから(笑)。それにもう1つの交渉相手手塚プロダクションは、ビジネス・ライクな大企業だからNGVとはまた全然違う意味で手強かったですね。幸い同プロの松谷社長は、手塚作品が海外で芸術作品として真の評価を受けることに重要性を感じていて、NGVのような美術館で展覧会を開くことに熱心だったんです。僕はこの企画を97年に始めて、実現まで10年近くかかりました。長かったです(笑)。今は関係者みんなハッピーですけどね。

−手塚作品の一番の魅力とは ?
 キャラクターはかわいいのに話はシリアス、というのは日本マンガに特徴的なアプローチで、これは実は西洋人にとっては非常に理解しがたいところです。非常に興味深い点ですね。例えば『罪と罰』。原作はロシアの深刻な小説なのに、主人公はかわいい男の子でしかも斧を握っていたりします(笑)。
 子供のころアストロ・ボーイをテレビで見た時、僕はどの話も悲しいと思いました。アトムは敵を殺してから、いつもその自分の行為に対して悲しくなってしまいます。手塚はすべての命を尊ぶことを訴えています。そして第1話目で主人公の親が死ぬ作品が多いのは、戦後そのもの。多くの子供がたった1人で生き抜いていった事実そのものです。手塚は自分自身戦争の中でさまざまなことを体験しました。その戦争観が、彼の理念の核になっていると言っていいと思います。
 手塚はその理念を形にするにあたって、小説ではなくマンガを選びました。シリアスな小説を書くより、シリアスなマンガを描く方が難しい。でも手塚は、マンガだからといって卑小化したりせずに、洗練された言葉と絵の結合によって、シリアスで強力なテーマを描き続けました。それが、僕にとって手塚作品の一番の魅力ですね。

TEZUKA: Marvel of Manga
11月3日よりNGVインターナショナルで開催
その後NSW州立美術館(シドニー)、サンフランシスコ・アジア美術館(米)を巡回予定



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